S&P500はどこまで下がるのか?

S&P500の直近の高値は7月31日につけた4588.96ポイントから、8月24日には4376.31ポイントまで下落しました。この期間で-4.63%の騰落率となりました。

多くの人は、この1カ月近くずるずるとその値を下げつづけ、現時点で5%近い下落に「どこまで下がるのか」と不安に思っている人もいることでしょう。

今回は、この下落の原因とこれからどこまで下げるのかということを考察していきたいと思います。

引用:Google Financeより「S&P500」の一カ月チャート

止まらない米長期金利の上昇

株価と金利は逆相関の関係にあります。金利が上昇すると株価は下落し、金利が低下すると株価は上昇します。

米国債10年物の利回りは、4.243%となり2007年11月以来の16年ぶりの高水準です。

グラフはTradingViewにより雨の日ブログが作成:米国債10年物利回り

※1米国債利回りは売られることで上昇します。16年ぶりの高水準となっている米国債が売られているのにはいくつかの要因があります。
(※1 国債の利回りと売買の関係は、NHK「サクサク経済Q&A『国際が売られると、金利が上昇 なぜ?』で分かりやすく解説されています。)

背景には、底堅い労働市場と依然として旺盛な個人消費にあります。これにより、これまで渦巻いていたリセッション(景気後退)懸念が和らぎました。

これまで、一定のリセッション懸念があり、景気後退への警戒感から株式が売られ、比較的安全な債券が買われてきました。

それが、景気が好調となると「読みが外れた」投資家が一斉に売り始めたのです。

加えて、FRB(連邦準備制度理事会)は未だ非常に強いインフレを退治が完了していないため、金利を下げることができないとの観測も長期金利を押し上げる要因となっています。

雨の日ブログが作成した解説画像

米国の消費者物価指数CPIを見てみると、2023年7月の値は3.2%となりました。これまで順調にその上昇率が低下してきたCPIですが、6月は3.0%からわずかながらも上昇に転じました。

このデータからインフレの再燃を警戒する声もありますが、注意しなければいけないのは消費者物価指数が前年同月比であるという点です。

昨年の2022年7月はインフレ対策が効果を出し始めているタイミングですので、必然的にこれまでよりもその値も高くなってしまうという点です。

ですが、ガソリン価格の高騰や住宅金利が極めて高い状況でありながら、住宅新規着工件数は好調であることから、インフレ懸念はいまだ払拭できていません。

いずれにしろ、各所で言われているとおり各種データを注意深く見ていく必要がありそうです。

統計調査結果をもとに雨の日ブログが作成したグラフ

S&P500はどこまで下げるか

では、S&P500はどこまで下げそうかということをテクニカルと心理的節目から考察していきます。起こりうる3つのパターンに分けて考えていきます。

TradingViewにて雨の日ブログが作成したチャート

1:4280ポイントをターゲットにするパターン(楽観)

一つ目は青のラインで示した4280ポイントをターゲットに下げていくパターンです。
チャートをみると6月より三尊(ヘッドアンドショルダー)を形成しているように見えます。

夏から秋にかけての軟調な相場のなかで、4280ポイントまで下げていくという楽観的な想定です。

2:4000ポイントをターゲットにするパターン

二つ目は赤のラインで示した、4000ポイントをターゲットに下げていくパターンです。4~5月のボックス相場だった時期の最安値圏の4000ポイントまで下がることが考えられます。

4000ポイントという心理的な節目も影響することが十分に想定されます。

3:3800ポイントをターゲットにするパターン(悲観)

年初来安値の3800ポイントをターゲットにしていくことを想定したのがオレンジラインです。

この想定は若干悲観的ですが、なんらかの大きなマイナス要因によってここまで下げることを想定しました。例えば、5月に米3銀行が経営破綻した余波がさらに波及したり、インフレが急速に再燃し政策金利の維持がより長期化するなどの事態が起こった場合です。

銀行の経営破綻ついて考えたとき、FHLBS(連邦住宅貸付銀行(Federal Home Loan Banks ))の預金残高が急速に減少していることが分かりました。FHLBSは民間の銀行に融資を行う「最後から2番目」の銀行としてその機能を果たしています。

資金繰りに困った銀行は資金調達が苦しくなります。そういった銀行に手を差し伸べるのが、FRB(中央銀行)であり、「最後の貸し手」 (LLR:Lender of Last Resort)機能を提供する常設の公的機関として機能してきました。

この「最後の貸し手」から資金を調達したとあっては、「その銀行は資金繰りに窮している」という世間の評価を受けています。

そこで、「最後から2番目の貸し手」たるFHLBSから資金を調達することで、そういった評価を避けることができます。

この「最後から2番目の貸し手」の預金残高が少なくなっていることから、大口の融資が行われたか、複数の銀行に融資が行われたということが推測できます。

銀行破綻の連鎖が再び起こる可能性は低いとは思いますが、いまだ燻っている状況であり、ある程度の警戒感を持っておくことが必要かと思います。

まとめ

夏から秋にかけて軟調な相場となることが想定されます。

いくつかのターゲットが考えられるが、4280、4000、3800ポイントあたりが想定されるラインとなると考えています。

若干、3800は悲観的な想定ではあるが、経済動向次第で警戒感を持っておくことが必要です。

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